トラブル対応


Trouble

1 トラブルが起きてしまったら

 企業法務においては,トラブルの事前予防が最も重要ですが,現実にトラブルが生じてしまった場合,法律関係を的確に分析し,有利な点,不利な点を踏まえた上で,解決に向けた交渉に当たる必要があります。

 当面は裁判に持ち込む予定がない場合であっても,相手方が強硬手段に出た場合に思わぬ損害を被ることのないよう,現状分析を的確に行いたいものです。

 以下,いくつかのタイプのトラブル対応について,留意したいポイントをまとめています。現在の事業について,今後どのような紛争のリスクがあるかイメージして頂くための参考にもして頂けると思います。紛争リスクや考えられる予防策については,カウンセリング致しますのでお気軽にご相談下さい。

2 企業犯罪・不祥事

⑴ 外部への対応

 個人が独断で起こした問題であっても,顧客や取引先との関係では,企業の道義的責任のほか,契約上の責任や使用者責任(民法715条)といった法的責任を問われる場合もあります。

⑵ 違反者への対応

 違反者に対しては,解雇などの雇用契約上の処分のほか,刑事上,民事上の責任追及をすることが考えられます。

⑶ 内部の調査,改善

 今後最も重要なのは,同じことを繰り返さない体制をつくることでしょう。今回は企業が被害者といえる状況であっても,同じような不祥事が発生すれば,企業としても管理体制に問題があるとみなされてしまう危険が大いにあります。

第三者委員会などを組織して,不祥事発生の原因を調査し,改善する必要があります。

3 会社関係訴訟

 会社の運営等に関して対立が先鋭化すると,決議取消しの訴え,株式発行無効の訴え,役員の責任追及の訴え,解任の訴え,解散の訴えといった会社関係訴訟に発展する場合があります。会社関係訴訟の大多数が中小規模の会社であるといわれていますが,人的な対立から発展した複数の訴訟が連続的に,あるいは交差的に提起されることも多いといえます。

 このような場面においては,思わぬ損害を被らないよう,会社,株主,役員等をめぐる複雑な法律関係や会社法上の手続を的確に把握し,各種訴訟の結果がどのような効果を持つのかを踏まえて対処することが求められます。

 また,個々の訴訟の勝敗によっては最終的な解決に至らないことも多いので,終着点を見極めて対応することも重要といえるでしょう。

4 医療問題

⑴ 説明対応,証拠保全対応

 医療過誤を主張される患者さん側は,まず病院側に説明を求めることもあれば,当初から裁判所の証拠保全手続を採ることもあります。

 いずれの場合であっても,診療に関する法律的に重要な事項や,法律的な手続などを踏まえておくことで,安心して対応することができます。

 また,証拠保全手続の多くは,申立人(患者側)にのみ弁護士がついた状態で行われ,かつ,病院側には開始の1時間程度前まで申立てを知らされないため,事案によっては,申立人側のペースで手続を進められ,現場に無用な負担がかかるケースもあります。このような事態にいつでも相談できる弁護士を用意しておくことが有効です。

⑵ 訴訟対応

 医療過誤訴訟では,医学の素人である裁判官に事実関係を理解してもらう必要があります。

 事実はどのようなものであり,どのような医学的知見があり,それを法律的に評価するとどのようになるのか,という点について,弁護士とよく話し合って対処する必要があります。

5 知的財産紛争

 

 特許,著作権に関するトラブルについては,事案に応じて弁理士等と協同して対応することが必要です。

6 システム開発紛争

 プログラミング,デザイン,システム開発等に関する契約は,法律的には請負を基本とする形式で締結されることが多いようですが,これらのサービスの特性上,当初から明確な設計図といったものが存在するわけではなく,テストや協議を経て徐々に仕様が決定していく形態がとられることが多くなります。また,成果物の評価が客観的に定まるというものではなく,注文者の意向や好みといったものが含まれる面もあります。そのため,紛争となった場合に長期化しやすい傾向がある分野であるといえます。

 一例として,請負報酬の請求をするためには,仕事が法律上完成しているといえる必要がありますが,その「完成」が争われる場合,この分野では,あるべき完成品の内容を確定することが容易でないため,見解の対立が生じやすいといえます。また,修補や損害賠償請求の前提として「瑕疵」が争われる場合,成果物を評価する基準が一様でないため,同様の問題が生じます。

 このような場合,裁判では,協議の経過や契約の目的などを踏まえ,最終的な当事者の意思について審理判断されることになりますが,裁判官もIT等の専門技術に必ずしも詳しいわけではないので,双方の主張内容を正確に伝えるためには,事実関係を法律の観点からかみ砕き,相当の時間を掛けて的確に説明をする必要があります。

 このような紛争が生じてしまった場合に適切に対応すべきことはもちろんですが,双方にとって無用なコストやリスクを防ぐためには,できる限り事前に紛争を予防することが有効です。この分野の特性を踏まえつつも,できる限り後々に紛争の種を残さないような契約の締結方法,中間合意の方法等を考えていくことが重要であるといえます。