犯罪被害者


victim of crime

弊所では,犯罪被害者の方に対して,場面に応じた様々な支援を行っております。

1 被害届,告訴・告発

(1)被害届

 被害届は,捜査機関に対して犯罪事実を申告するものです。被害届を提出したからといって,警察にその事件について捜査する義務が常に生じるわけではありませんが,特に,被害を受けてから時間を経て被害申告を行う場合には,被害届を提出することで,警察に被害の存在を認知してもらうことが重要です。

なお,犯罪捜査規範第61条においては,被害による被害の届出をする者があったときは,その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず,これを受理しなければならないと規定されています。平成24年8月24日付警察庁長官通達「迅速・確実な被害の届出の受理について」においても,被害届の受理を先送りにする等の昨今の警察での不適切な対応を問題視し,被害届の迅速・確実な受理の徹底が指示されています。

参考URL:https://www.npa.go.jp/pdc/notification/keiji/keiki/keiki20120824.pdf

(2)告訴・告発

 告訴・告発とは,捜査機関に対して犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求める意思表示をすることをいい,犯罪被害者等の告訴権者がする場合を告訴,第三者がする場合を告発といいます。

告訴・告発は,捜査の端緒の一つとなるだけでなく,親告罪について,告訴がなければ公訴の提起(起訴)の提起ができないという非常に重要な意味を持っています。親告罪においては,告訴がない段階では,捜査にも着手しないことが多いです。親告罪の例としては,以下のようなものが挙げられます。

強制わいせつ罪,準強制わいせつ罪

強姦罪,準強姦罪

強姦未遂罪

未成年者略取・誘拐罪、わいせつ目的・結婚目的略取・誘拐罪等

名誉毀損罪・侮辱罪

信書開封罪・秘密漏示罪

ストーカー規制法違反の罪(禁止命令等に違反した場合は告訴不要)

過失傷害罪

私用文書等毀棄罪・器物損壊罪・信書隠匿罪

親族間の窃盗罪,不動産侵奪罪,詐欺罪,恐喝罪,背任罪,横領罪

著作権侵害による著作権法違反の罪

特許権侵害による特許法違反の罪

実用新案侵害による実用新案法違反の罪

 

2 示談交渉

 犯罪の被害によって被害者の方が受けた損害については,被害者から損害賠償請求をすることができますが,加害者側から示談の申し入れがある場合も多くあります。

 加害者本人との直接交渉は,当事者同士の話し合いであるが故,時に互いに感情的になることもあり,被害者の方にとって大きな負担になります。また,加害者側に弁護人がついている場合にも,示談交渉に関する知識や経験の差から,対等な立場での交渉が難しくなることがあります。

 また,加害者への厳重な処罰を望んでいる場合でも,示談交渉においては,加害者側から「宥恕(ゆうじょ)文言」,つまり,「寛大な処分を望む」といった言葉を示談書に入れることを求められたり,被害届や告訴・告発の取り下げを求められたりすることが多々あり,早期かつ確実な損害の賠償というメリットとの間で悩まれる方も少なくありません。

一度示談を受けてしまうと,その内容を後から修正,変更することは困難ですから,成立させる示談の内容については,対等な交渉に基づいた慎重な検討が不可欠です。請求することができる損害は,怪我の治療費や奪われた金品相当額のみならず,犯罪がなければ得られるはずだった利益(休業損害等)や,精神的苦痛に対する慰謝料,遅延損害金等,多岐に渡ります。また,これらの損害は,加害者が当然賠償しなければならないものですので,加害者が損害賠償金を支払うことと,被害者が加害者を宥恕することとは本来別問題であり,必ず被害届や告訴・告発を取り下げなければならないわけではありません。加害者側から示談の申し出があった際には,示談金の提示額や宥恕等の各条件の妥当性等について,示談を受ける前に弁護士に相談されることをおすすめします。

 

3 公判段階での配慮

 検察官が公判請求をした場合には,その事件について,裁判所において公判が開かれることになります。

 被害者の方のためには,裁判の優先的傍聴,刑事事件記録の閲覧・コピー,公開の法廷で氏名等(被害者特定事項)を明らかにしない措置,心情に関する意見陳述の機会の付与,証言する場合の不安等緩和措置(付添い,遮へい,ビデオリンク方式)といった,様々な制度が用意されています。特に証人尋問については,不安に感じられる被害者の方が多いと思いますが,適切な措置を必要に応じて併用することにより,被害者の方のご負担を最小限に抑えることができます。

 

4 被害者参加制度

 一定の犯罪について,被害者やご遺族等の方々が,刑事裁判に参加することができる制度です。

 参加が許されると,公判期日への出席が許されるほか,刑事事件についての検察官の権限行使に対して意見を述べ,説明を受けることができます。また,一定の要件の下で,情状証人に対して尋問をしたり,被告人に質問をしたり,事実または法律の適用について意見を述べたり(論告,求刑)することができます。

 被害者参加は,被害者やご遺族等の方々が自らすることもできますし,弁護士に依頼をして,弁護士に上記の行為を行わせることもできます。特に証人尋問や被告人質問,論告・求刑については,裁判におけるルールを守って行う必要があるため,弁護士に依頼をし,適宜アドバイスを受けながら対応されることをおすすめします。

 なお,被害者参加制度の対象となる犯罪は,以下のとおりです。

① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

強盗殺人,殺人,傷害致死,危険運転致死傷,強姦致死傷,強盗致死傷等

② 強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ,準強姦

③ 逮捕監禁の罪

④ 略取誘拐,人身売買の罪

⑤ ②~④の犯罪行為を含む罪

       強盗強姦,集団強姦,特別公務員職権濫用等

⑥ ①~⑤の未遂罪

⑦ 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に規定する過失犯,業務上過失致死傷,重過失致死傷

 

5 損害賠償命令制度

 一定の犯罪について,刑事事件を担当している裁判所に対し,損害賠償請求についての審理を求めることができる制度です。

 被告人に対し有罪の言渡しがあった場合,直ちに損害賠償命令事件の審理が開始され,刑事事件を担当した裁判所が,刑事記録を職権で取り調べるなどして,原則として4回以内の期日で簡易迅速に手続きが行われます。ただし,4回以内の期日で終わらない場合や,損害賠償命令の申立てについての裁判に対して異議の申し出があった場合等は,通常の民事訴訟手続きに移行します。

 この制度では,刑事訴訟記録がそのまま証拠として引き継がれ,また,担当裁判官も刑事事件と同一であることから,裁判所の下す判断について,ある程度の予測をもって対応することができます。そして,請求額にかかわらず,一訴因あたり2,000円という安価な申立手数料で審理を求めることができるため,被害者の方の負担を軽減することができるといえます。

 なお,損害賠償命令制度の対象となる犯罪は,以下のとおりです。

① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

強盗殺人,殺人,傷害致死,危険運転致死傷,強姦致死傷,強盗致死傷等

② 強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ,準強姦

③ 逮捕監禁の罪

④ 略取誘拐,人身売買の罪

⑤ ②~④の犯罪行為を含む罪

       強盗強姦,集団強姦,特別公務員職権濫用等

⑥ ①~⑤の未遂罪

 

6 弁護士に依頼する資力がない被害者の方のための援助制度

(1)犯罪被害者法律援助(日弁連委託援助)

一定の犯罪の被害を受けた被害者やその親族,遺族の方が,被害届,告訴・告発,事情聴取同行,マスコミ対応,消極的示談,裁判傍聴の付添い等について弁護士に依頼する場合には,弁護士の報酬や費用について,援助を受けることができます。対象となる被害は,生命,身体,自由又は性的自由に対する犯罪,配偶者暴力,ストーカー行為による被害等です。

ただし,この制度を利用するにあたっては資力要件(預貯金等の合計額から6か月以内に支出することとなると認められる費用の額(治療費など)を差し引いた額が200万円未満)があり,これを超える資力を有する方は利用することができません。

(2)国選被害者参加弁護士

 被害者参加について弁護士に委託をする場合,一定の資力要件(預貯金等の合計額から6か月以内に支出することとなると認められる費用の額(治療費など)を差し引いた額が200万円未満)を満たす方については,弁護士の報酬や費用は,原則として国が負担することとなっています。

(3)民事法律扶助

 損害賠償命令制度を利用する際や,民事訴訟の提起によって損害賠償請求をする際に弁護士に依頼したい被害者の方のための制度として,弁護士費用等を当面立て替えてもらうことのできる制度があります。

利用するための資力要件の詳細については,法テラスにお問い合わせいただくか,弁護士におたずねください。